災害用・非水道水対応浄水機器の研究
〜 災害用浄水機器に関するガイドライン 〜

浄水器は水道水をより安全で安心のおいしい水にするために開発され、今日では消費者の信頼を得て 広く使われています。しかし、気候変動による影響が大きくなり災害時などで水道水が使えない状況が 多く発生します。そんな時、浄水機器が対応できないか研究・検討を行ってまいりました。

※「浄水器」とは、水道水を原水とした家庭用浄水器として家庭用品品質表示法により品質表示等が規定されていますが、本ガイドラインでは、非水道水を対象とした水浄化装置について井戸水や地下水を飲用水としてご使用の家庭でも安心して使える浄水器の開発と確立をしてまいります。

(1)非水道水対応の浄水器について

水道敷設が困難である地域や水道水が使えない地域では地下水(井戸水)が飲用として使用される場合があり、それらの原水を対象とした浄水機器が必要です。

日頃から飲用に使われてきた地下水(井戸水)に、時として異物、有害物質が混入している場合があります。

※参照:飲用井水、地下水対応の浄水器のガイドライン

(2)災害時に使用する浄水器について

地球温暖化等気候変動によって災害が起こり安全な飲用水が得られない状況が頻発しています。この様な事態に対応できる浄水機器が望まれています。

浄水器協会では、災害時に飲用や生活用水確保の為、災害用浄水機器について検討しました。

 以下に、災害時において家庭用浄水器や非水道水対応の浄水機器を活用した生活用水確保を目的とした”災害用浄水機器に関するガイドライン”についてご説明します。
■目 次■
§1 想定される水源と生活用水としての使用用途
(災害時に於いて飲用や生活用水として利用できる可能性のある水源)

災害時は水道水の給水が停止する状況が予想されます。その様な状況で、生活用水を得るための原水としてどのような水源を使用できるでしょうか・・・。 

本ガイドラインでは、生活用水にするための使用可能な水源について検討しました。

1.1 水源の区分と維持管理

浄水器協会では、災害時に想定される水源をT類、U類、V類として下表の様に設定しました。

T類:水道水が、水道用タンク等の給水用具に一定期間内(目安として10日以内)貯留されている水。

U類:T類に準じた水だが、貯留日数がT類より長く経過した水(中・長期間貯留した水)。

V類:T類、U類以外の水(特別な水質管理等を行っていない天然水等)。 

1.2 水源の管理について(表-1のU類の水及びV類に区分される水源において)
U-@:管理された雨水とは、以下の条件による

・降り始めの雨(降雨直後の初期雨水)が排除されていること。

(初期雨水を排除できる機構の雨水貯留タンクも市販されていますのでご参照ください)

・地表や道路などから集水した場合等、水質が著しく不明な状態ではないこと。

・屋根や雨水を集水するための配管などから金属塗料や有害物質などの溶け出しがないこと。

(屋根材や雨水を集水する建築部材については有害物資などの混入や溶けだし等について事前に確認しておくことが必要です)

・殺藻剤など、飲用に適さない薬剤を投入していないこと。

U-A:管理されたプールの水とは、災害時に飲用に転用することを想定したオンシーズンのプール及び除藻剤などの飲用に適しない薬剤などを投入していないオフシーズンのプールの水。
なお、オンシーズンを終わる際は使用後をそのままにせず一度新しい水道水を入れ替えてからオフシーズンに入るものとする。
V-D:管理されていないプールとは、上記以外の水質について管理されていないオフシーズンのプール。
1.3 家庭内においての水源の維持管理
災害時における応急的な給水のために使用する水源は、いざ使用する際に、水質が悪化していたり漏水のために貯留水量が減ってしまっていては活用できません。災害時に備え予め確保してある水の管理は重要な要素と言えます。浄水機器の維持管理については後述の§3災害時に備えての項をご参照下さい。
§2 浄水器に使用される主なろ材の種類と特徴及び災害時に使用可能な浄水機器

このセクションでは、§1でご説明した原水を用いて災害時に活用できる可能性をもつ代表的な浄水機器についてご紹介します。

2.1 浄水器に使用される主なろ材の種類と特徴

家庭用浄水器は”ろ材”により水道水中の遊離残留塩素や、濁りを生ずる微粒子、懸濁物質などが除去できます。

現在、家庭用浄水器に使用されている代表的なろ材として、活性炭があります。活性炭は水道水中の遊離残留塩素を除去・低減する能力が高く、家庭用浄水器のほとんどに採用されています。

また、水中の懸濁物質をはじめ大腸菌まで除去可能な中空糸膜をろ材としたタイプも多く製品化されています。

他にも、海水淡水化等産業用としても使われている逆浸透膜(以下RO膜という)があります。

家庭用浄水器の詳細については、浄水器のコーナーでご説明していますのでご参照ください。

2.2 災害時に使用可能な浄水機器

現在、販売され、水道水を原水として日常使用されている家庭用浄水器には色々な種類がありますが、災害時に使用可能な水源とその水源の水を通水した場合に”飲用”として利用できる浄水機器についての検討に際し、災害時に使用できる水源の性状と、浄水器の除去性能を中心に検討しました。

このガイドラインでは、災害時に想定したA:原水種別、B:浄水器、C:飲用/非飲用、D:日常利用/災害時利用というカテゴリーに分け、それぞれの組み合わせ別に検討しています。

A:

原水種別

     
B: 浄水器

i) 「活性炭+中空糸膜」浄水器

    ii) 「活性炭+RO膜」浄水器
   

iii) 「その他のろ材が組み込まれた浄水機器」

C:

飲用/非飲用(”飲用”以外に利用できる生活用水)

D: i) 日常使用している浄水器を災害時に転用する場合
  ii) 災害時専用に保管していた浄水器を使用する場合

”飲用”、”非飲用”各々の用途に使用可能かについての検討結果を表−2に示します。
例えば、V類に区分される原水性状に於いては、逆浸透膜を用いた浄水機器の使用は最低条件と考えられます。

2.3 災害時に使用可能な浄水機器の要件

災害時に浄水機器を活用して生活用水を確保する時の要件について検討しています。

2.3.1 災害時に浄水機器が必要となる期間の設定  

災害時の際の、上下水道ライフラインの復旧について多くの実例データから、災害時に浄水機器が必要となる期間については、諸官庁からの資料を検討した結果30日間と想定しました。

2.3.2 除去性能(浄水機器の評価)物質の選定  

災害時においては、性状不明な有害物質が多種にわたり原水に含まれる可能性があるので、災害用浄水機器を利用した場合でも全ての有害物質に対応し除去できるわけではありません。

災害発生時に使おうとする浄水機器の性能を災害発生直後に確認することは困難なため、事前に検査を行い当該浄水機器が有する除去性能を確認しておく必要があります。表-3に示す物質は水の基本的要件等から検討し設定した10項目(10物質)です。

使用する原水の区分(T類〜V類)により、必要な除去性能物質(下表の”〇”の)について、災害時に使用する浄水機器を使って事前に確認試験を実施しておく必要があります。

a)除去性能(浄水機器の評価)項目選定の目安

@ 水道水水質基準51項目(健康関連項目31、生活上支障関連20)のうち、健康関連項目31項目を基本とした。

A 生活上支障関連20項目中、色、味、臭気、基礎的性状の中で五感として特に影響される項目について選定した。 

B 飲用井戸等衛生対策要領に記載されている飲用井戸等の定期の水質基準の項目の物質のうち、現在、家庭用浄水器の規格基準として試験方法が制定されている物質を選定した。

C 井水等消毒用塩素が投入されていない水源であることを想定していることから塩素化合物は除外した。

※なお、今後環境変化等があれば必要と思われる物質にについて加えていきます。また、選定の目安の詳細説明については、資料編「(3)除去性能物質の選定の目安」をご参照ください。
b)災害時に使用する浄水器の試験規格(試験方法)

@ JIS S 3201(家庭用浄水器 試験方法)

A 厚労省告示第261号(水質基準に関する省令の規定に基づく告示)

c)浄水器として有していなければならない公的規格基準
災害用浄水機器の基本要件として、以下の公的規格に適合していることとした。

@ JIS S 3241

A JIS S 3242

2.3.3 注意事項

@ 家庭用浄水器を転用

家庭用浄水器を災害時に転用する場合、災害時に使用する原水の性状が明確ではないので、家庭用品品質表示法に則り表記された浄水能力通りに浄水能力が発揮できるとは限らない。

あくまで、非常時における応急使用であるため、飲用する際には、ご使用の浄水器メーカーへご相談下さい。

使用する「原水」によって対応できる「ろ材」が異なるため原水の状況(表-2参照)をよく確認し、電源等が必要な場合は確保についても確認し、当該浄水機器の取扱説明書に従って使用してください。

A 災害用専用浄水機器

使用する「原水」によって対応できる「ろ材」が異なるため、原水の状況(表-2参照)をよく確認のうえ、電源等が必要な場合は必要量の電源確保についても確認し、当該浄水機器の取扱説明書にしたがって使用してください。

§3 災害時に備えて(日常からの準備と浄水機器の維持管理)

災害はいつやってくるかわかりません。いざという時に慌てることのないよう、日頃から災害時の浄水器の使い方や原水となる水の確保について確認しておきましょう。

このコーナーでは、日常使用している浄水機器と災害時専用浄水機器について、日頃からの保管方法や維持管理についてご説明します。

3.1 浄水器の保管方法と維持管理
3.1.1 日常使用している浄水器  

!メーカー指定の保管、維持管理を実行してください。 

3.1.2 災害時専用で、普段は使用しない状態にある浄水器、および浄水機器

!メーカー指定の保管、維持管理を実行してください。

@ 高温となる場所に設置や保管をしないでください。

A 凍結の恐れのある場所に保管をしないでください。

B 次亜塩素酸ナトリウムを保管する場合は「保存期限」を確認してください。

C 試運転等の動作確認は事前に行っておいてください。

3.2 災害時における浄水器(浄水機器)の操作方法
3.2.1 日常使用している浄水器  

!メーカー指定の方法で操作してください。

3.2.2 災害時専用で、普段は使用しない状態にある浄水器、および浄水機器

!メーカー指定の方法で操作してください。

@ 原則として風雨にさらされない場所に設置してください。

A 可能な限り平らで安定した安全な場所に設置して操作してください。

3.3 水源の確保

災害時への備えとして、あらかじめ水源の確認や身近に置いておける原水の確保をしてください。

@ 容器などに貯めた水道水 「ペットボトル」「ポリタンク」等

A 浴槽に貯めた水道水

B 貯留している水道水 「マンション・ビルの受水槽」「水栓トイレのタンク水」「非常用貯水槽」等

C 期限切れのペットボトル保存水

D 学校などのプール水 水の使用には許可が必要な場合があります。

E 防火水槽の貯留水 消防用のため、水の使用には許可が必要な場合があります。コンクリート製の貯水槽で水の入れ替えをおこなっていない貯留水はpH値が高い場合があります。

F「雨水タンク」に貯留された水、井戸水は事前に水質の検査をしておきましょう。

G 川、湖、沼では、安全に取水ができるか、また、災害時もその水質が安定しているか等、必要な情報を収集し確認しておきましょう。

3.4 災害時に使用する水の水質確認
a)水質測定の目的 

浄水機器は水に含まれた多くの人体有害物質を低減する能力がありますが、なるべく良質な水が使用できるよう、水源の水質測定を事前に行っておきましょう。

!飲用ができるか確認できない井戸の水や、河川・湖・沼の水などは災害時の水質がわからないので、浄水機器を使用しても生活用水としての水質を確保できるかわかりません。使用にあたっては水質についてよく確認してください。

b) 水道水以外の原水を浄水する場合
水道水以外の原水を浄水する場合は、簡易検査キットで使用前に水のチェックをしましょう。 簡易検査には以下のような機器や試薬があります。
@ TDS(Total Dissolved Solids )溶解性蒸発残留物
TDSメーター(水温計やpH計が付いたものもあります。) 水に溶け込んだ電気を通す無機塩類(カルシウム、マグネシウム、カリウム等)の値を示します。 数値が低いものほど水に溶け込んだ不純物が少ないことを意味します。
A pH
pHとは酸性・アルカリ性の程度を表す値です。飲用水基準ではpHの目安は5.8〜8.6です。汎用のpH計で簡単に測定できます。
B 水温
水温により、浄水機器の内部が破損したり劣化する恐れがあります。適性な温度の原水をご使用ください。推奨水温は5℃〜35℃です。
C 硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素(土壌から浸出の可能性がある物質)
硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素はパックテストにより確認することができます。なおこれらの物質は多量に摂取すると、乳幼児にメトヘモグ ロビン血症をおこすおそれがあります。特に飲用とされていない井戸水・河川・湖沼の水を使用する 際にはパックテスト等を推奨します。飲用可能な水質基準は10mg/ℓ以下です。
D ヒ素(土壌から浸出の可能性がある物質)
ヒ素パックテスト 自然水中のヒ素は地質に由来していますが、鉱山廃水、工場排水、温泉などから混入することもあ ります。飲用となる水質基準は0.01mg/ℓ以下です。
E 遊離残留塩素(消毒剤として使用されている薬品)
残留塩素計により水の安全性向上や保存のために次亜塩素酸ナトリウムを水に入れる場合に、その濃度を計ります。 なお、次亜塩素酸ナトリウムを保管する場合は「保存期限」を確認しましょう。
F 過マンガン酸カリウム消費量(過マンガン酸パックテスト)
水が「し尿」等で汚染されると過マンガン酸カリウム消費量も増加するので、水中の有機物汚染の度合いを知る目安となります。飲用となる水質基準は10mg/ℓ以下です。
G 簡易検査キット
専門メーカー各社が販売しています。セントラル科学(株)、東亜ディーケーケー(株)/HACH等の製品があります。
3.5 推奨検査機関
使用想定原水や浄水機器で浄水した水について、事前に詳細検査をご要望される場合は以下の浄水器協会会員の検査機関を推奨いたします。普段から浄水器の試験に精通している機関です。
【株式会社総合水研究所】
〒590-0984
大阪府堺市堺区神南辺町1−4−6
業務推進部 営業課
電話:072-224-3532
FAX:072-224-3257
E-mail:sougou@mizuken.com
【株式会社兵庫兵庫分析センター】
〒671-1116
兵庫県姫路市広畑区正門通4−10−8
環境技術部 浄水器担当
電話:079-236-9446
FAX:079-230-0220
E-mail:hac@hyobun.co.jp
【一般財団法人日本食品分析センター】
〒206-0025
東京都多摩市永山6−11−10
衛生化学部 水質試験課
電話:042-372-6707
FAX:042-372-6942
お問合せフォーム:https://www.jfrl.or.jp/contact/create
【東レテクノ株式会社】
〒520-0842
滋賀県大津市園山1−1−1
技術部
電話:077-537-5150
FAX:077-537-8659
E-mail:
§4 災害時に活用できる主な浄水機器と基本性能


4.1 製品名: RO(逆浸透)膜浄水器(株式会社環境向学)
4.2 製品名:RO(逆浸透)膜浄水器(前澤化成工業株式会社)
4.3 製品名:浄水自転車「モバイルオアシス」(ベーシック株式会社)
(3)設置状況の例
RO膜浄水器の設置、使用風景はこちらのページに掲載しています。